特許 令和7年(行ケ)第10069号「ロール製品パッケージ」(知的財産高等裁判所令和8年4月23日)
【事件概要】
本件は、無効審判事件において、「特許第6590596号の請求項1、3~4、6~7に係る発明についての特許を無効とする。」とした審決が維持された事例である。
【争点】
主な争点は、本件発明1の「衛生薄葉紙の2plyのエンボス処理されたシートを巻いた」ものであり、「軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装してな」り、「巻長が63~103m、コアを含む1個のロール製品の質量が200~370gであり、(前記包装袋内の4個の前記ロール製品の質量)/(前記フィルムの坪量)が25~80(g/(g/㎡))であ」る点(相違点1)が容易であるか否かである。
【結論】
審決は、「ロール製品」に関し、2plyのシートを採用し、その巻数を増加し、1パッケージ当たりの個数を減ずることを検討することは、技術常識に照らして当業者が適宜行うべきものであるから、2plyのシートの巻数を増加し、1パッケージ当たりの個数を減ずる方向となる甲2記載事項を甲1発明に適用する動機付けは十分存在するものであり、甲1発明に甲2記載事項を適用し、相違点1に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものであると判断した。
これに対し、原告は、甲1発明と甲2記載の発明は、ガゼット包装とキャラメル包装という包装形態の違いがあり、その包装形態に応じて包装材であるフィルムに要求される物性は全く異なるから、甲2に記載されたフィルムの坪量を甲1発明に適用すること自体にそもそも阻害事由があり、上記の点を措くとしても、甲2記載の発明が当該構成を採用するのは、「長巻のロール製品を包装袋に収納したロール製品パッケージにおいて、持ち運ぶ際に破れにくくてゴワゴワせず、かつ適度な巻き硬さを有するロール製品を包装した場合にロール製品が潰れ難いロール製品パッケージの提供」という甲2記載の発明の目的のためであり、「複数本の指を挿通しても指の痛みが生じず、持手部の破損を防止したスリットを有する包装体」を提供することを目的とする甲1発明において、当該構成を採用する動機付けはない旨主張した。
判決は、以下の通り判示した。
甲2記載事項は、巻長が66m、75m又は93mである2plyのロール製品(トイレットロール)を、軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて(2列2段形態)包装袋20に包装してなるものである。また、甲2には、「包装袋2は、・・公知の包装方法(例えば、キャラメル包装、ガゼット包装等)で包装されている。」との記載があり、甲2に記載された発明の包装方法として、キャラメル包装に限るものではなく、ガゼット包装でもよいことが示唆されている。
そうすると、ガゼット包装を採用する甲1発明において、技術常識の内容を踏まえ、当業者において、2plyのシートの巻長を長くし、1パッケージ当たりのロール数を減らす方向となる甲2記載事項を甲1発明に適用する動機付けがあったと認められる。
また、甲1発明において、甲2記載事項のロール製品を収納する際、甲2記載事項のロール製品の重量等に応じて、甲2記載事項の包装袋の厚さ、すなわち坪量を選択することは、当業者の通常の創作能力の発揮であって、適宜選択し得た設計的事項というべきである。
そして、甲1発明に甲2記載事項を適用すれば、相違点1に係る本件発明1の構成を得ることができること、また、甲2記載事項は、相違点1に係る本件発明1の数値範囲の全てを開示するものではないが、本件発明1において、甲2記載事項に具体的に開示されていない数値範囲は、甲2記載事項を甲1発明に適用するに際して当業者が適宜なし得た設計事項にすぎないと解されることは、本件審決の判断のとおりである。
以上によれば、甲1発明に甲2記載事項を適用し、相違点1に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものであると認められる。
【コメント】
原告は、甲1発明に甲2記載の構成を組み合わせる動機付けがないと主張したが、判決は、長巻ロールを収納するパッケージにつき、持ち運びやすく、収納されているロール製品が潰れにくく、フィルムの触感に優れたパッケージを実現するための課題を解決する手段が当業者に与えられていて初めて、当業者が甲2記載事項を甲1発明に適用する動機付けを有するに至るなどとは解されず、甲2記載事項を甲1発明に適用した場合に、パッケージが持ち運びにくくなるとか、収納されるロール製品が潰れやすくなるといった問題が生ずることを示す記載が甲1又は甲2に存在するとも認められないとして原告の主張を採用しなかった。
(本件発明)
